長時間のデスクワークによって「なんとなく腰が痛い」「立ち上がるときに違和感がある」と感じたことはありませんか?
背中や腰の不調は働いている多くの人が抱えている共通の悩みです。
デスクワークは身体を動かす機会が少ない分、長時間同じ姿勢でいることが多く、姿勢や作業環境の影響を強く受けます。
この記事では、腰痛が起こる原因を解説したうえで、今すぐ始められる予防のための習慣を3つご紹介します。日々のちょっとした意識と行動で、つらい腰痛を防ぐための工夫ができます。すべてではなく1つでも取り入れて、腰痛対策を行いましょう。
デスクワークでおこる腰痛の主な原因
腰に負担がかかる姿勢で過ごしている
不適切な座り方
椅子に浅く腰掛けて背中が丸まった姿勢や、あごを突き出した姿勢で長時間作業していませんか?
このような座り方は、腰に大きな負担をかける原因になります。
正しくない姿勢を長時間続けると、背骨や骨盤のバランスが崩れ、筋肉や関節に過度なストレスがかかります。その結果、腰を支える機能に影響が出るのです。
反り腰
背筋を伸ばそうとして腰を反らせすぎてしまう「反り腰」も注意が必要です。
一見きれいな姿勢に見えますが、腰椎のカーブがきつくなりすぎて、結果的に腰痛を引き起こしやすくなります。
猫背姿勢
猫背姿勢も、腰に大きな負担を与えます。
デスクワークをしていると、画面に集中するあまりパソコンに向かって背中を丸めて前のめりになってしまうことも多くあります。
特にノートパソコンを使っている方は、画面の位置が低くなりやすく、自然と前かがみの姿勢になってしまいがちです。また、机に肘をついた姿勢も猫背になりやすく、注意が必要です。
長時間同じ姿勢をとっている
座った姿勢を何時間も続けていると、筋肉が緊張したままになり、血行が悪くなってしまいます。
とくにお尻の筋肉は、圧迫され続けることで固くなりやすく、腰への負担がさらに増します。
また、長時間同じ姿勢を保つことで下半身の血流が滞ると、エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)のようなリスクも高まります。
これは、ふくらはぎなどにできた血のかたまり(血栓)が、立ち上がったときに血流にのって肺に流れて細い血管などが詰まることで、重篤な症状を引き起こす可能性もあるものです。
実際に、長距離フライトだけでなく、長時間のデスクワークでも発症例が報告されています。
座っていること自体が悪いわけではありませんが、「動かない」ことは問題です。デスクワーク中でも、こまめに体勢を変えたり、1時間に1回は立ち上がって歩いたりするなど、血流を促す工夫が重要です。
椅子や机など、外部の要因
自分の体に合っていない椅子や机を使っていると、それだけで姿勢が崩れ、腰への負担が大きくなります。
たとえば、椅子が高すぎて足が浮いてしまったり、机が低すぎて前かがみになってしまったりするのは、腰痛の原因のひとつです。
精神的・肉体的な要因
インナーマッスル(体幹)や背中・お尻の筋力が不足していると、正しい姿勢を支える力が弱まり、自然と腰に負担がかかります。普段から運動などを行わない方は、筋力が弱まっている可能性も高いため、要注意です。
また、職場のストレスや過度な集中により、無意識に身体が緊張していることもあります。
気づかないうちに、身体がこわばってしまい、長時間同じ姿勢を続けてしまっている状態に注意しましょう。
腰痛を防ぐデスクワーク習慣3選

習慣1.椅子や机などの環境を整える
腰痛対策を始めるうえで、まず押さえておきたいのが作業環境の見直しです。
姿勢やストレッチの効果も、椅子や机が身体に合っていなければ十分に発揮されません。
「どんな姿勢で、どんな環境で仕事をしているか」は、まさに腰痛予防の“土台”になる要素です。
ここでは、椅子や机の高さ、モニターの位置など、体に負担をかけない環境づくりのポイントをご紹介します。
椅子の高さ
椅子は足の裏が床にしっかりつき、膝が約90度に曲がる高さが理想です。
エルゴノミクス(人間工学)に配慮したチェアを使えば、腰への負担が少なく、長時間座っても疲れにくくなります。
もし椅子を変えられなくても大丈夫です。足が浮いてしまう場合は、フットレストを使ったり、足元に安定した台を置くなどして、足裏が支えられる環境を作るのがおすすめです。
デスクの高さとモニターの位置
肘を自然に曲げたときに、キーボードがちょうど手の位置にくる高さが目安です。
モニターは目線よりやや下、目から腕一本分以上離れた位置に設置すると、猫背や前のめり姿勢になりにくくなります。
逆に、モニターの位置が高すぎると、無意識に見上げる姿勢になり、首の後ろや肩に負担がかかってしまうことも。
猫背や前のめりを防ぐだけでなく、首の緊張を避けるためにも、自然な視線の角度を意識して調整しましょう。
その他のデスク環境の工夫
デスク環境を柔軟に工夫できる人は、さらにいくつかの選択肢が増えます。
最近では、デスク環境としてスタンディングデスクやバランスボールチェアなどを取り入れる人も増えています。
スタンディングデスクは、立ったまま作業ができる昇降式のデスクのことです。スタンディングデスクを使用して立って仕事をすることで、長時間の座りっぱなしによる血行不良や姿勢の固定を防ぐのに効果的とされています。
一方、バランスボールチェアは、バランスボールを椅子代わりにすることで、自然と体幹を使いながら座れるという特徴があり、腰痛改善・姿勢改善にもつながるといわれます。
ただし、どちらも常時使用するのではなく、通常の椅子と適度に使い分けることが大切です。
立ちっぱなしや不安定な姿勢が続くと、逆に体に負担をかけることもあるため、自分の体調や作業内容に合わせて通常の椅子に座るなど調整しましょう。
今のデスク環境を変えにくい方は
「今の環境をすぐに変えられない」という場合でも、腰用クッション(ランバーサポート)やフットレストを活用するだけで、姿勢の改善につながります。持ち込みが許される場合はクッションやふっとレストを導入し、厳しい場合はデスク環境以外の工夫で対応しましょう。
習慣2.正しい姿勢で座り、定期的に体を動かす

正しい座り方
椅子には深く腰をかけて、座骨(ざこつ)でしっかり支えるように座ります。背もたれを活用して背筋をまっすぐに保ち、足の裏全体が床に接している状態が理想です。
ただし、正しい姿勢がつらく感じる場合は、体がまだ慣れていない可能性があります。その場合、無理をせずに最初は1日5分、10分といった短時間から始め、少しずつ身体に覚えさせていきましょう。
動かない時間を減らす
どれだけ良い姿勢でも、長時間同じ姿勢でいると筋肉が硬くなり、血流が滞ってしまいます。
そのため、最低でも1時間に1回は立ち上がって軽く動くことを意識しましょう。その際に肩や首をまわすだけでも血行がよくなり、疲れやだるさの予防になります。
習慣3.ストレッチ・筋トレなどで体を鍛える
デスクワーク中の姿勢に気をつけることは大切ですが、身体そのものを整えることも腰痛予防には欠かせません。特に、ストレッチや筋トレで体を鍛えることを日常に取り入れることで、腰痛に対して、より根本的な改善が期待できます。
ここでは、腰痛予防に効果的なストレッチと筋トレを具体的に紹介します。
どれも自宅やオフィスで無理なく取り入れられるものばかりです。まずはできそうなものから試してみてください。
※腰椎椎間板ヘルニアなどの持病がある方、強い痛みがある方は無理をせず、医師や専門家にご相談ください。
ストレッチで凝りをほぐす
長時間の座り姿勢で凝り固まった筋肉は、定期的なストレッチでほぐすことが重要です。
たとえば、椅子に座ったまま腰をゆっくり左右にひねるだけでも、腰まわりの筋肉をやわらげる効果があります。
在宅ワークなど周囲を気にせず動ける環境であれば、ヨガのポーズを休憩のタイミングで取り入れることも効果的です。「猫のポーズ」や「子どものポーズ」などがおすすめです。
また、腰と連動する背中・首・肩も一緒にケアすることで、全体的なバランスが整い、姿勢の維持が楽になります。
肩を回したり、首をゆっくり左右に倒すストレッチも、短時間で取り入れやすくおすすめです。
筋トレで体幹と姿勢を支える力をつける
腰痛を防ぐためには、姿勢を支える筋肉を鍛えることが効果的です。姿勢を支える筋肉は、大きく分けて以下の3つです。
- 脊柱起立筋(背骨に沿った筋肉):姿勢を安定させる
- 腹直筋・腹横筋(お腹まわりの筋肉):体幹を安定させる
- 大殿筋(お尻の筋肉):骨盤の傾きを整える
これらの筋肉を鍛えることで、反り腰や猫背などの悪い姿勢を改善しやすくなり、腰への負担が軽減されます。
おすすめのトレーニングメニュー
初心者にもおすすめの簡単な筋トレとして、以下のメニューがあります。
バードドッグ
四つん這いの姿勢から、対角線上の手足(例:右手と左足)を同時にまっすぐ伸ばす動作を繰り返すトレーニングです。
背中やお尻、体幹全体をバランスよく鍛えることができ、姿勢の安定性を高める効果があります。
やり方
・床に四つん這いになり、背中をまっすぐに保つ
・右手と左足を同時にまっすぐ伸ばす(背中と一直線になるように)
・2~3秒キープし、ゆっくり戻す
・左手と右足も同様に行う
左右交互に10回×2セットを目安に
ヒップリフト
仰向けに寝た状態でお尻を持ち上げるトレーニングです。
お尻(大殿筋)と腰まわり(脊柱起立筋)を中心に鍛え、骨盤の安定性や姿勢改善に役立ちます。
やり方
・仰向けになり、膝を立てて足を腰幅に開く
・手は体の横に置き、肩を床につけたままお尻を持ち上げる
・肩から膝までが一直線になる高さまで上げる
・2秒キープし、ゆっくり下ろす
10〜15回×2セットが目安
クランチ
腹直筋を集中的に鍛える腹筋運動です。
体幹の強化や姿勢改善に効果的で、腰の安定性向上にもつながります。
やり方
・仰向けになり、膝を立てて足を床につける
・両手は胸の上または頭の後ろに軽く添える
・息を吐きながら、肩甲骨が床から浮く程度に上体を起こす
・ゆっくり戻る
10〜15回×2セットが目安
デッドバグ
仰向けで手足を交互に動かすトレーニングで、腹筋と背筋を同時に使う全身系の体幹トレーニングです。
姿勢の維持やバランス能力の向上に役立ちます。
やり方
・仰向けになり、両手両膝を直角に上げる
・右手と左足をゆっくり床に向かって伸ばす
・腰が反らないようにお腹を引き締める
・ゆっくり元に戻し、反対側も同様に
左右交互に10回×2セットを目安に
これらは道具がいらず、自宅でも簡単にできるものばかりです。無理のない回数からはじめて、継続することがなにより大切です。
習慣化のコツ
どんなに効果的な対策も、続けられなければ意味がありません。
腰痛予防のストレッチや姿勢改善も、日々の生活の中で無理なく取り入れてこそ、真の効果を発揮します。
ここでは、腰痛予防を自然と続けられるようにするための3つのコツをご紹介します。
日常生活に組み込む
新しい行動を習慣化するには、「すでにある習慣」に紐づけるのが効果的です。これをハビットチェーン(習慣の連鎖)といいます。
たとえば、
「朝コーヒーを淹れる」という習慣に、「コーヒーを待つ間にストレッチをする」という習慣を組み合わせて、チェーンのように習慣を繋げます。ほかには、「ランチ後にデスクに戻る前」+「30秒だけ体をひねる」など。
すでにやっている行動と組み合わせることで、習慣の“忘れ防止”にもなりますし、自然に動作に入ることができます。実は、意識しなくても自然にできるようになれば、継続のハードルはぐっと下がります。
小さな目標を設定する
「1日30分運動しよう!」と気合を入れすぎると、忙しい日がくると途端に目標を達成できなくなって挫折しがちです。
そこで大切なのが、あえて小さく始めること。
たとえば、「まずは1日5分だけストレッチをする」「朝だけ姿勢を意識して座る」「週1回だけ筋トレをやってみる」など、「これくらいならできそう」と思える小さな目標を設定するのがコツです。
それが積み重なることで、自信と効果が自然に育っていきます。
可視化する
行動の記録を“見える化”することで、モチベーションが続きやすくなります。
おすすめは、カレンダーに〇をつける方法です。カレンダーを用意して、実践できた日に印をつけるだけでも、「続いている」実感が湧きます。
また、ハビットトラッカーアプリの活用もおすすめです。ハビットトラッカーや習慣アプリは、スマホで手軽に習慣を記録できるうえ、通知機能でリマインドもできます。また、ほとんどのアプリにはグラフなどでこれまでの軌跡を確認することもでき、都度振り返ることでモチベーションを新たにできます。
続けていくと「今日はまだやってないな」「やらないと気持ち悪いな」と思えるようになり、行動が自然に定着していきます。
まとめ
デスクワークによる腰痛は、決して特別なことではなく、多くの人が日常的に感じている悩みです。
しかし、その原因の多くは「姿勢」や「環境」、そして「動かなさ」によるものであり、ちょっとした工夫や習慣の見直しで予防・改善が可能です。
今回ご紹介した予防のアイデアを意識することで、身体の負担を減らし、仕事のパフォーマンスや日常の快適さも大きく向上します。
日々の生活に予防週間を取り入れて、「腰が痛くなるのが当たり前」ではなく、「腰が痛くないのが当たり前」の毎日に近づいていきましょう。